庵野秀明について

庵野秀明については説明が要らない人も多いことでしょう。
代表作で言えば、ゼロ年代のアニメを変えた「新世紀エヴァンゲリオン」の監督でもあります。
「アニメはエヴァ前後で大きく変わった」と言われるまでに影響力の大きな作品です。
(監督以外にも脚本やメカニックデザイン等、様々な部分に関わっています)

エヴァンゲリオンは聖書をモチーフにしていることは、しばしば取り沙汰されます。
もともと、エヴァンゲリオンの本来の意味はギリシャ語で「福音書(良い知らせ)」という意味があります。
「福音書」とは新約聖書のイエス・キリストの言行録のことです。(詳しく言えばマタイ・マルコ・ルカ・ヨハネの福音書)
簡単に言ってしまえばタイトルはもろに聖書からとっています。作品中に出てくる多くのワードが聖書を元ネタとしたものが見られます。
このことから、コアなファンは神話をモチーフにしているのだからと作品の深読みがなされています。
  

僕が「娯楽」としてつくったものを、その域を越えて「依存の対象」とする人が多かった。そういう人々を増長させたことに、責任をとりたかったんです。作品自体を娯楽の域に戻したかった。ただ、今はそれ(現実逃避するオタクへの批判)をテーマにするのは引っ込めています。そういう人々は言っても変わらない。やっても仕方ないことが、よく分かりました。
                                                         朝日新聞「be」より


庵野本人は作品そのものに宗教的考えや神話的考察は入っていないと否定しています。
また、このインタビューは旧劇場版では有耶無耶に終わってしまったエヴァに終止符を打つため(逆に言ってしまえばオタクを納得させるため)に新劇場版を作っていると言っています。

庵野の中ではエヴァという作品はもうすでに完成されているものなのです。
残念ながら、世間は意味の分からない終結をしたことに腹を立てているのです。
(私もその一人ですが、これは庵野という才能に期待し、もっと面白いものをという欲求なのでしょう)

聖書は世界に誇るベストセラーです。(キリスト教信者の数を考えたら、当たり前の話です)
誰もが知っているこの神話を土台にすることは私たち日本人には馴染みが無くても、世界的に見れば、こんなに手っ取り早いことはないでしょう。
庵野はあくまで聖書を土台にして「新世紀エヴァンゲリオン」という作品を作り出しただけなのです。

庵野秀明の「オタク性」

庵野秀明という人間はガチガチの「オタク」です。


幼い頃から色々なマンガ、アニメ、特撮、戦記物等の魅力に次々と、とりつかれる。幼い頃から絵を描くのが好きだった。 
中学時代は美術部に所属。基礎デッサンもせず、マンガと油絵を描く日々が続く。

                                                      庵野秀明公式WEBより

このように書かれています。是非、公式で全文読んでみてください。かなり面白いです(笑)
全文読めば、庵野のオタクっぷりが垣間見れます。
また、庵野は二次制作を好んでいます、これもまさにオタク気質です。

二次制作を好む者が聖書を元に作品を作ることに違和感はないでしょう。
最近ではゴジラのリメイクの脚本・監督を務めることが決まったようです。
庵野は自分の好きな作品を自分の頭の中で妄想したものを外に出すのが飛びぬけて上手いのです。
もっと言えば、周りの人間に理解されることなどは二の次、三の次で自分の妄想を映像にすることがとにかく好きなのでしょう。

マルメラードフとは?

ようやく次の話題に移れます(笑)

庵野秀明は現代の「マルメラードフ」か?
これが今回のタイトルなのですが、マルメラードフはドストエフスキーの「罪と罰」に出てくる登場人物の一人です。
マルメラードフは場末の酒場で主人公である青年ラスコーリニコフに支離滅裂な話をしてきます。
ラスコーリニコフは厄介な親父だと思いながら話を聞くのですが、その話には聖書を多く引用し、マルメラードフの暗い心の核心を突く部分がたくさん散りばめられています。

このマルメラードフはアル中で幼い奥さんの連れ子達と奥さんと自分の娘がいるのに、仕事もせず酒ばかり飲んでいる奴です。仕舞いには自分の娘を売春させるまでになります。

当時のロシア人の多くは聖書を読んでいませんでした。(ロシア語訳の聖書が存在していなかった)
それ以前に文字を読める人もそこまでは多くなかったようです。

しかし、このマルメラードフは文字を読め、聖書もしっかり読んでいるようです。(役人ではあったのでそれなりの教養は持ち合わせていた)

マルメラードフの話に1つ、大きく不可解な部分があります。
マルメラードフはしばらく仕事をしていなかったのに、急に仕事が決まるのです。
今まで飲んだくれて借金までしていた人間がどうして急に職に就けたのでしょうか?

職に就けたのはマルメラードフの娘、ソーニャが初めての売春をした後なのです。
ソーニャは普通の売春では考えられないほどの高額なお金を家に持って帰ってきます。(ソーニャは美人ではあるのですが・・・)

ソーニャは役所の高官であるイワン閣下に売春したのでしょう。(マルメラードフの元上司です)
マルメラードフは自分の娘を売って、職を手にしたのです。

酔っ払い話とエヴァ

これは聖書の物語とリンクします。(私はキリスト教徒ではないので聖書は文学として捉えています)
キリストの弟子にユダという人物がいます。
キリストはユダヤ教について疑問を持ち、改革が必要だと考えた人でした。
ユダヤ教会はそんなキリストが邪魔になり、なんとかして処分しようと画策します。
(新しい考えが受け入れられないのは今も昔も同じだと考えると人間はあまり変化していないことがわかりますね)
そんなユダヤ教会にユダはキリストの居所を銀貨30枚で売ってしまいます。
(ユダがどうしてキリストを売ったのかはいまだ謎です。ユダはキリストを売った後に自殺しています)

ソーニャは売春の後、持って帰ってきたお金は銀貨30枚です。
マルメラードフ=ユダ ソーニャ=キリスト という対比がここで完成します。

マルメラードフは自分の悲しい人生を聖書を土台にしてラスコーリニコフに伝えようとしたのです。


庵野とマルメラードフ。この二人はかなり似通った部分があります。もちろんすべてではないですが・・・

聖書という神話に自分の思いを乗せる。
淫靡で少し不道徳な匂いがしてきます(笑)