今回は西尾維新原作の「化物語」から始まるライトノベルのアニメシリーズについての考察です。(ここでは総称して、<物語>シリーズとここでは述べます)

私は友人から薦められていたのですがライトノベルにあまり興味がなく、内容に触れたのはここ最近です。(とはいっても原作はまだすべて読めていません。アニメはざっとシリーズを通して観終っています)

私は日常で不可思議な現象の起こる物語を良く好む傾向があります。考えてみると、ジョジョも4部が好きです。
明らかなゴテゴテのSFには物語の世界に入るのに時間がかかるため苦手です。

個人的な話はここまで(笑)にして、この<物語>シリーズには主人公である男子高校生、阿良々木暦が「怪異」に関わる事件を解決していく物語です。ご存知の方も多いでしょう。


「怪異」とは?

怪異は簡単に言ってしまえば、妖怪というと理解しやすいかもしれません。人間に原因不明の不思議な現象を及ぼす存在として登場するわけです。(怪異に対する説明は長くなるのでここまでとします)

この<物語>の大きな特徴の1つが、怪異に関する(怪異そのものという例外がありますが)ヒロインが存在します。

阿良々木君はそのヒロインを怪異から救うわけです。漫画にありがちな戦いによって怪異を倒す(取り除くと言った方が正しいか?)こともありますが、ほとんどは言葉で解決します。

また、怪異は敵としての認識は間違っています。怪異は人間に何かしようと思って存在するものではないからです。
私たち人間が何らかの原因をきっかけにして怪異を呼び寄せるのです。怪異は人間の心理によって生みだされると言っても過言ではないのです。

私の考えとしては「怪異」は「トラウマ」と同義できるのではないかということです。

例を挙げましょう
阿良々木君の彼女にしてメインヒロインの戦場ヶ原ひたぎは母親が娘の病気を治すためにと新興宗教に入信。戦場ヶ原はその宗教のおかげ?か病気が治り、母親は新興宗教に嵌っていきます。

母親は新興宗教の幹部に娘を差し出すよう言われ、戦場ヶ原は性的暴行をされそうになりますが抵抗します。この時、母親はこの様子をじっと見ていただけでした。

これをきっかけに両親は離婚、母親が宗教に貢いだ多額な借金を父親と抱えることになります。

戦場ヶ原はもし、私が抵抗しなければ家族がバラバラになることはなかったのではないと悩んでいるときに怪異である蟹と行き遭い「思い=重い」を取り除いてもらうことで、悩みから解放されると共に体重も失ってしまう。

もうひとつ例を
戦場ヶ原と対を成すヒロイン、羽川翼は家族構成がとても複雑で血の繋がった父親は行方不明に、血の繋がった母親は再婚するが離婚。血の繋がった母親と結婚した父親は羽川を連れて再婚するが過労死。その後、父親と結婚した母親は再婚し「羽川」となる。
そんな複雑な環境の中(羽川は両親に気を遣っているため、自分の部屋も無く廊下で寝ていて、自分の家事は自分でこなす)
で怪異である猫に憑りつかれ、人々を襲いストレスを解消する。

ヒロイン達の多くが家族関係に何らかの不和を持っている。また、その不和が原因で怪異による影響を受ける。
家族関係に「トラウマ」を持っていることで怪異は姿を現す。

怪異はトラウマの具現化となっているのです。
トラウマは倒すものではなく、取り除くのほうがしっくりくるでしょう。
トラウマは力で無理矢理ねじ伏せるのではなく、誰かと対話し、そのトラウマに真正面に向かっていくことではないでしょうか。


現代の人間関係
家族というものは切ろうと思って、切れるほど生半可なものではありません。
家族は他人ではないからです、血の繋がったものだからです。(羽川の場合はあまりに特殊すぎるので省きます)
どうあがいても逃げることのできない最小にして最大の人間関係なのです。
家族の存在が目の前に存在していなくても、自分という存在はその血なしでは存在しないのです。

家族だけでなく、大きな意味でもそうです。
長年続く不況、そこから湧き出る将来への不安、その不安は溜まって私たちは孤独に生きることを選択しようとしています。
ネットというツールで人間とつながっていても、顔を合わせた熱を持った人間関係はどんどんと希薄になっています。隣人の顔も名前も知らないという状況も当たり前です。
不安や孤独はどんどんと内に向かっていきます、それは闇へと変化していきます。この闇が「怪異」なのでしょう。

阿良々木君はとにかく優しい人物です。自分を犠牲にしてでも困った人を助けたいという信念をもっています。
彼は残念ながら、強い力を持っていません。持っているのは怪異である吸血鬼に血を吸われたと引き換えに手にした人間離れした回復力くらいです。これもまた彼らしい能力です。

彼はとにかく言葉で助けようとします。(本人に自覚はないでしょうが)
なぜ、こんな状況になったのか? どうして怪異はその人に憑いてしまったのか?
いろんな人に話を聞いて、他の人の援助をうけて、なんとか助けるのです。

彼も元々は人間関係というものを鬱陶しがっていた一人でした。(友達をつくったら人間強度が下がるとまで言っていました)
しかし、彼は様々な人達と関わることでヒロインたちを救ってきたのです。

家族に関わらず、私たちは熱を持った人間関係を築かないといけないと阿良々木君は私たちに伝えたいのかもしれません。